2008.10.03 06:27:20 |
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小野 |
「このぶどう普通のと違うね。」息子②が言った。
実家から送られてきた様々な種類のぶどうの房を切り分けていたときのことである。
「どうしてそう思うの?」
「だって、ぶどう色じゃないもの。」
誰が教えたのか、ぶどうの色は紫色ということらしい。
「ぶどうに普通も普通じゃないもないんだよ。みんなそれぞれ違った色、違った形、違った味をしていて、普通のぶどうなんてないんだ。」
「緑のはマスカットって言うんでしょ。」
「そうじゃないよ。マスカットは緑色だけれど、緑色でもマスカットじゃない種類もたくさんあるし、紫色のでも若いときは緑色をしているんだ。」
緑色のぶどうはマスカットだなんて、どこで覚えたのだろう。小さなショックを感じた。
うちの実家では毎年何十種類ものぶどうを作っていて、そのうち10種類程度を
毎年送ってもらう。
むろん、緑色のぶどうも何種類も入っていて、その中にいわゆるマスカットは全く入っていないか、入っていても1つだけだ。それらのぶどうの名前を全ていちいち教えるわけではないが、それでもいろんな種類があることくらいはわかっているはずだと思っていた。
「ほらごらん、いろんな種類のぶどうがあるだろう。どれが普通のぶどうかな?」
息子が紫色の丸い粒のぶどうを指差す。マスカットベリエーだ。思わず苦笑い。
「でもこれは、マスカットの一種だよ。マスカットにもいろいろあって、みんな緑
色をしているわけじゃない。」
「でも普通のマスカットは緑でしょ。」
また「普通」が出てきた。
「普通のぶどう、普通のマスカットなんてないんだよ。それぞれみんな違っているんだ。たくさん作られていてたくさん出回っているものが、たまたま紫色だったり緑色だったりするだけなんだ。犬だってそうでしょ。いろんな種類がいて、色や形がそれぞれ違っていて、どれが普通なんてことはないでしょ。」
息子②が頷いた。最近犬の図鑑をみて、いろんな犬がいることを知っているのだ。それにうちの犬は雑種で、その図鑑のどれでもないことも知っている。
「人間もそうだね。普通の人間なんていないものね。」
「その通り!」
切り分けたぶどうを息子②が頬張る。「普通」のでもマスカットでもない。赤色
のグラデーションが美しいぶどう甲斐路だ。
この剥きにくいぶどうを私は剥かずにそのまま口に放り込む。独特の甘みと香りが口いっぱいに広がる。そういえば、日本人の多くはどんなぶどうでも皮は剥くものだと思っている。それが日本では「普通」の食べ方だ。でも、他の国では私のようにそのまま口に放り込んで、皮ごと食べるか皮を後で吐き出すのが一般的だ。ぶどうの種類によって食べ方は違うけれど。
日本の普通は世界では普通じゃない。というか、普通の食べ方なんてのもないのかもしれない。