Home やってみログ 小野 びわ湖南部エリア・マネジメントスクール2008の第2回目
2009.01.22 10:13:39
小野

びわ湖南部エリア・マネジメントスクール2008の第2回目の講演に参加してきました。

講師は株式会社エフアンドエムの代表取締役社長 森中一郎氏です。

タイトルは上場の体験談、ということでしたが、上場そのものよりは起業から上場に至るまでの様々なエピソードを中心とした講演でした。参考になるばかりでなく、トークもとても面白く楽しみながら聞けました。前回の渡部氏の講演も内容が濃くて素晴らしかったですが、今回も多くの学びがありました。

全てを書くのは無理なので、今回もひとつだけピックアップしましょう。

 

「事業を興すというのはそもそも大変なことである」

当たり前という人もいるかもしれませんが、多くの方は甘く見ていると思います。森中氏は10個の事業を興してうまくいくのは1つか2つ、とおっしゃってました。実際、ベンチャー企業を興して5年後に残っているのは10社に1,2社程度と言われますから、たしかにそのくらいの率でしょうね。

だから、成功するにはいろいろやってみなきゃいけないし、ひとつや二つ失敗したからといってくよくよすることはないのです。ひとつの事業に拘り続けて、全てをそれに注ぎ込むようなやり方は破綻のもとです。だから引き際を考えることも大切です。なにより、ちょっと躓いてもへこたれない根性、あるいは気持ちの持ち方こそが大事なのです。

 

ひとつのことを徹底して追及する姿勢こそ大切であり、あれこれ中途半端に手を出してどれもモノにならないのでは仕方がない、ということを主張する人もいるでしょう。しかし、私は会社経営に関する限りは必ずしもそうとは言えないと思います。大事なのは、何を目標として事業を行うのかという理念であり、そこが揺らがないのであれば、個々の事業内容が変化すること自体は問題ないだろうと思います。

 

前回の渡部氏の講演についてのブログにも書いたように、企業が成長を持続するためには小さなイノベーションを絶え間なく続けていく必要があります。イノベーションとは、新しいことへの挑戦であり、異質なものとの出会いです。その意味では、エフアンドエムがやっていることは理にかなっています。

 

とはいえ、儲けや規模の拡大ばかり考えて、事業内容が目標や理念から遠ざかり、迷走するようになると危険です。講演の後で、受講生の何人かの方と食事がてら飲みに行ったのですが、エフアンドエムの事業に一貫性がないことに対して疑問を呈した方がおられました。私は講演の中ではそのような疑問を感じませんでしたが、調べてみるとエフアンドエムの事業展開は確かに迷走している部分があります。

 

森中氏が起業を志した背景には、日本の中小企業の利益を向上させたい、という思いがあったといいます。そのために、「サービスの水道哲学」を会社の経営理念として掲げています。大企業向けに提供されている法人向けの高額なサービスを、中小企業や個人事業者でも利用できるように、低額なサービスとして提供してゆくということを目的としているわけです。

 

創業期の金融業向けのフラワーギフト事業はともかく、その後は生命保険販売員向けの記帳サービス、総務向けの情報提供サービスなど、基本的には中小企業や個人事業者向けのサービスを展開しています。

ところが、その一方で一般向けのパソコン教室をやっていたり、傘下と思われる某社ではマルチまがいの商法をやっているとしてネット上で問題視されたりと、講演で話さなかったところで迷走しているところがずいぶんあるようです。講演の中でも矯正下着の販売に手を出して失敗したエピソードも披露されていましたが、これなども経営理念とずいぶん離れており迷走した例のひとつです。パソコン教室はまだいいのですが、直接運営しているわけではないとはいえ、倫理上問題があるような企業と関連しているのは大きなリスク要因です。

 

大きな資本や設備、背景となる技術や知識や既得権益を持たずに、知恵と工夫で上場企業に育て上げた森中氏の技量には学ぶべきところが多いのですが、他の多くの新興企業にも見られる脇の甘さは長期の企業経営を目指すうえでは反面教師とすべきでしょう。

 

脇の甘さは財務状況にも反映されますので、財務状況を見てみると、総売り上げ、経常利益ともに、上場に至るまでの伸びと比べると上場後はあまり伸びておらず、上下変動も結構あります。上場直後の第11期は売上高35.55億円、経常利益6.14億円に対して第18期は売上高39.40億円、経常利益4.56億円です。第16期に売上高46.72億円、経常利益7.74億円と最高の業績を上げているのと比較すると、最近の業績の落ち込みは大きいです。新機軸となるべきタックスハウス事業での躓きが大きく、現在は壁に突き当たっているようです。

 

とはいえ、自己資産比率も順調に上がっていますし、財務指標全体が悪いわけではありません。注目すべきは利益率の高さです。中小企業や個人事業主を主要な顧客として安価なサービスを提供しているので、もっと利益率は低いだろうと思っていたのですが、かなり効率的な経営をしているようです。

サービス業における最大の固定費は人件費ですが、事業規模に対して従業員の数が少なく、しかも平均年齢も若いですから、人件費を低く抑えられていることが利益率の高さにつながっているのでしょう。ただし、今後次第に平均年齢が上がると、人件費が利益を圧迫する可能性があります。また、営業部門の効率を追求しすぎると、マルチまがいの商法に手を出すような危険性も増えます。

 

いろいろ書きましたが、今後の展開を期待したいと思います。

 



  経営修行中
 

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